対談シリーズ

伝統と革新

新美:
我々のモノづくりは自動車関係の仕事が多いんですけど、欧米から技術が入って来ましたけど、その中で日本独特の工夫をしながら、作り方とか日本的なデザインの車とかいうのを出してきて、今や世界から受け入れられるようになってきたわけですけども。
先生の世界だとどんな感じなんですかね?
假屋崎:
やはりこの伝統というものはとても大事なものだと思います。いけばなですと400年ほど前に始まった芸術なんですけども、その時代、時代に応じて形っていうものがまず出てくるわけです。
いろんな流派があるんですね。今実は三千流派からあると、いうぐらい言われているんです。
新美:
三千!?日本にですか?
假屋崎:
そうなんですよ、もちろんそうなんですけども。その流派ごとに形というものがあって、型ってものがありまして、それはもちろん守っていかなくてはいけないし、ずっと受け継がれてきたものではあるんですけれども。
現代の世界でそれが通用するものかどうかっていうのは、やっぱりその時代、その時代に新しいものを取り入れることによって、これは「革新」という言葉に置き換えられますけど、伝統を守りながら常に新しい風を取り込むっていうことですよね。そういうことによって、だんだんと変化をしていかなくてはいけないわけですよ。

この住んでいる空間も昔と比べると全く違ってきますよね。それから花の種類も違ってきますし、それからみなさまの気持ち、意識というものも全然変わってきているので、それは常に刻一刻と変わってくるので、新しいものをどんどん生み出しながら。それがしかも本物でなくてはいけないっていうところがすごく難しい。

お花っていうのはまず器があって、それからいける花材があって、そしていける空間があって、もうひとつ大事なのがいける人。この4つの出会いでいけばなというものはでき上がるわけですよ。
例えば、今日のこの作品ですけども、これ実はブルーに塗ってあるのが角材なんですよ。
角材なんていうものは、いけばなで材料として使うなんてことはあり得ないことなんですよ。
新美:
およそ考えないですよね。
假屋崎:
でもこれをこうやって取り入れることによって、またひとつの素材として、普通だったら考えられないし、今でも「こんなものを使うのはご法度だ」っていうような流派だってあるわけですよ。
新美:
そういうことですか。
假屋崎:
でもそれには疑問をすごく感じるわけですよ。同じひとつのものを作るのに、素材って何だっていいんじゃないって。昔は土を使って作品を作ったこともあるんです。
新美:
えっ!土ですか?
假屋崎:
過去にはあるんですよ。やっぱり自分自身を表現する。一番いけばなとして成り立つ、自分のポリシーで誰にもない個性っていうもの、それも加味しながらものを生み出していくっていうことに。
新美:
捉われないんですね。
假屋崎:
そうですね。これとても大事なことだと思うんですけれども、やはりモノづくりとして、この辺りはいかがお考えになりますか?
新美:
それはまるで一緒と申し上げますかね、特に自動車はヘンリー・フォードがアメリカでT型フォードっていうのを作り出して、これを大量に作るということでコストダウンしようというふうにして、バッと世界に広がっていったのが一番初めだと思うんですよ。
それまではひとりの職人さんが全部トンテンカンテン作って1台を仕上げる。
だからものすごい時間がかかる。
假屋崎:
そうですね。
新美:
これではなくて、工業製品だから均質な物を大量に安く作ろうというんで、彼らは流れ作業っていうのを考えだした。これを我々っていいますか、みんなが取り入れた。
これをただ取り入れるだけじゃなくて、ここに人の知恵をもっと入れようと。悪い物が後へ流れていかないようにしようじゃないかと。
ひとりの人がやった仕事をきちんと100%正しいっていうことを証明して、保証して次に渡そうと。次の人に。
そのためには、仕上がらなかったらコンベアを止めようと。コンベアに捉われない。コンベアだけど普通はコンベアは止めないんですよ。
止めてもいいじゃないか、とかそういうことを考えて、止まるとそこに問題があるんで、みんなが集まって問題を解決していると。みんなで知恵を出して。ドンドンドンドン新しいモノがそこからまた生まれてくるわけです。
お花の世界も全部先生が作るわけじゃないですよね?
假屋崎:
その通りです。
新美:
きちんとしてくれないと良い作品ができない。それと一緒でですね、モノもそうなんです。
きちんとやってつなぐっていうのは、日本の基本的な伝統ですよね。
先生も花材にしろ、花器にしろって言われましたけど、僕らも部品をいっぱい作ってもらっているわけですよ。みんなが良い仕事してくれないと成り立たない。
みんな同じように「革新」をしないと新しいクルマにはならない。
假屋崎:
そうですね。良いものは良いもので残して、そしてさらに。
新美:
先生が言われた、本物であるということ。
假屋崎:
そうです。これとっても大事なことだと思います。