対談シリーズ

次代を担う人づくり

新美:
ビジネスというのは、基本的に未来永劫と言いますか、できるだけ長く、サスティナブルにいくっていうことがものすごく大事なんですね。
そうするとそのために人間のその世代、世代って言うのは移り変わっていきますから、後継者育成っていうのが非常に大事になるわけですけども。

先生の華道の世界でも、せっかく400年の歴史のあるところから始まってきて、先生が新しい道を切り拓いていく。こういうのをどう発展させていきたいと思っておられるのか、お聞きしたいなと思うんですけど。
假屋崎:
私の場合は2つあるんですよ。まず生徒さんたちがいまして、私の花というものに賛同してくれた方たちにそれをお教えしながら、それがまたどんどん裾野が広がっていくということですね。
新美:
底辺を広げていくっていう感じですね。
假屋崎:
はい。大勢いらっしゃるもんですから、一般の方々にも、新しく入ってきた方にも簡単にいけられて、そして奥が深くて、ずっと生涯花に携わっていきたいって喜びを感じてくれる方もいらっしゃるので、そういう方に対しての指導方法だとか、そういったこともあるんですよ。それがまずひとつの柱ということであります。
もうひとつはやはりスタッフが大勢いますので、新しく入って来た人、そして中堅の方、大ベテランの方、それぞれが独り身から結婚をして、お子様が生まれて、そして家族を持ってというような、何年にも渡って生活ということもありますでしょ。
そういった意味でもやはり職場の環境ですとか、内容だとかそういったものをきちんと作らなくてはいけないっていう、この2つの柱があるんですけど。

やはり人材っていうものは宝物だとすごく思います。私は本当に歯車のひとつということで、もちろん先頭に立ってはやりますけども、みんなの力、支えられてそれぞれのやるべきこと、それから切磋琢磨して良い仕事をするという人たちをどんどん増やして。
それがひとつの大きなものになるというところが、とっても難しいところでもあり、毎日悩むところでもあり、そしてみんなが笑顔で「良かった」ってやる気が出て。
新美:
そうですね。それものすごく大事なことですね。
假屋崎:
自分の力でもっともっと先を見通して、みんなの力を借りながら頑張っていけるっていう、充実感を味わうというところが、やはり人材育成のひとつのやり方のすごく難しいことでもあり、それが上手くいった時に喜びにつながるのではないかなと思うんです。

これだけの組織を統率していくというのは、すごいエネルギーをお使いになると思うんですけども、そのあたりはどんな感じですか?
新美:
我が社へ入ってきたら、例えば現場で働くような人たちは最初に、企業内の学園に入るんですね、1年間。そこで学校で習わなかったような基本的な技能をもう少しレベルを上げてやる、というようなことをしています。
そのおかげでだんだんその中から何人か「現代の名工」であったり「黄綬褒章」をいただくような人たちも出てきます。そういう人たちをトップにしながら、そういう非常に腕に覚えのある人たちをずっと残していくということを片方でやっています。

あとは日々の仕事の中でいろんな問題がございますでしょ。こいつを解決していく。自ら解決していく。自分たちだけでできなかったら、どうやって周りの助けを借りて解決していくか。こういう人たちが育っている風土と言いますか、社風と言いますか。これを維持していけば人を育てるのが我々の仕事だっていうのをみんなが思うようになるわけですよ。

先生も花をいけるっていうのに、材料にしろ、花器にしろね、その人たちも成り立つようにしていかないといけないわけでしょ。そういう点ではどういう工夫されているんですかね?
假屋崎:
花を生産してくれる方が思いの丈ですばらしい素材を作ってくれた。
これをみなさまにも、一般の方にも分かっていただけるようにっていうことで、展覧会などでも(生産者の)顔写真なんかも載せたり、その人の想いだとか。そういったものも広く、みなさまに分かっていただけるようにということで、地道な活動なんですけれども、そういうことをさせていただいて。器にしてもそうだし、いろんなものに携わった方々みんなの力によってひとつのものが夢が叶うっていう。 それが人材育成っていうものにもつながるんです。「自分の名前なんか出ない」とかそうじゃなくて、みんなが一生懸命すばらしいものを生み出したり、作り上げたならば、それがちゃんと認めてもらえるというような、そういう仕組みを少しでも分かってもらえるようにって、活動させていただいているんです。

例えば工場でお勤めされている方でも、何のためにやっているのか。それが分かると「このために自分はこれをやっているんだ」と思うと、何かすごくみんなのためにっていうのもあるし、これがこういうことのために作られているんだ、というような目的ですよね。それは“希望”というものにつながるわけですよ。希望というものは、それが夢が叶っていくっていうことになるわけですよ。
新美:
それは良いお話を聞きましたね。僕らもこのボルト1本締めるにしても、それは全てお客様につながっている、ということを考えて仕事をしてもらうようにしているんですよね。それは我々だけじゃなくて、仕入先さんもやってくれないとダメなんですよ。
假屋崎:
そうですね。